「映画で旅する自然派ワイン」という特集上映が11月1日からシネスイッチ銀座などで行われている。上映されるのは、ソビエト連邦の構成国であったジョージア(かつてはグルジアと明記されていたけど)の『ジョージア、ワインが生まれたところ』とオーガニック大国と言われるフランスの『ワイン・コーリング』の2本だ。
かつては当たり前に造られていた「自然派ワイン」。自分たちが飲んで楽しむためのワイン。大量に造られるものではなく、ワイン造りをどう受け継ぎ、自分の人生を豊かにしていくのか。ワインはその地域に根ざした文化である。そんなことを再確認させてくれる2本のドキュメンタリーだ。
風土、土壌、気候、土地固有の天然酵母の味。それらがあいまって土地の個性「テロワール」につながる。自然派ワインとは、こんな土地で生きる人たちによって大切に造られたワインのことを指す。フランス語では「ヴァン・ナチュール」。ビオやオーガニックと区別されているという。
映画の中でこんな言葉が語られる。「革命を起こしたいわけじゃない。自分が好きなワインを造りたいだけ。土地と結びついた本物のワインを」
映画を観て、とにかく自然派ワインが飲みたくなってしまった。きっとひとつひとつの個性が凝縮されているワインなのだろう。
『ジョージア、ワインが生まれたところ』
世界最古のワイン醸造の起源を持つグルジア。その歴史は8000年にもなるという。素焼きの甕を土の中に埋めて発酵・熟成させるクヴェヴリ製法は、2013年にユネスコ世界無形文化遺産に登録された。かつてはグルジアの多くの家庭でこの製法でワインが作られていたという。暮らしのなかに当たり前に存在していたワインが、ソ連時代に迫害を受けたことによって激減。現在も少量しか作られていない。
「究極の自然派」と呼ばれるクヴェヴリ製法を守ってきた人々のドキュメンタリー。
監督・撮影・編集:エミリー・レイルズバック
出演:ジェレミー・クイン、他
2018年/アメリカ/78分/英語、ジョージア語/DCP/1:2.35/原題:Our Blood Is Wine
© Emily Railsback c/o Music
『ワイン・コーリング』
南フランス、ルーション地方。フランス自然派ワインのパイオニアともいわれるジャン・フランソワ・ニックの元には、 同じくワイン造りに取り組む者たちが集まってくる。常に情報交換をし、収穫に人手が足りなければ助け合う。そして夜には仲間たちと楽しくワインを飲む。
自然と向き合ってワイン造りと人生を楽しむ人たち。生産性ではなく、身体と地球に優しい自分のワインを造ることをモットーにしている。フランスの食事では「ワインとパンとチーズがあればいい」と常套句のように言われるけれど、ワインはフランスの文化であることを教えてくれる。
監督:ブリュノ・ソヴァール
出演:ジャン・フランソワ・ニック、他
2018年/フランス/90分/フランス語/DCP/5.1ch/1:1.85/原題:WINE CALLING
© PINTXOS2018
2019年11月1日(金)、シネスイッチ銀座、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
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