【レッド・ツェッペリン:ビカミング】バンドの奇跡と時代背景を未来につなぐドキュメンタリー。

 レッド・ツェッぺリンが誕生し、世界で人気を獲得していったバンド創成期の軌跡を追ったドキュメンタリー映画『ビカミング』が公開されている。この映画、レッド・ツェッぺリンのファンだけではなく、多くの音楽ファンに観てもらいたい。

 まず自分のレッド・ツェッぺリン熱を記しておきたい。70年代の中学生でレッド・ツェッぺリン後期の作品に出会って、そこから遡って聞いていった。最初に買ったのが『プレゼンス』。高校に入ってからはパンク〜ニューウェイブの波に飲み込まれていって、レッド・ツェッぺリンやハードロックと呼ばれていたバンドたちは、あまり聞かなくなっていた。スタジオ・アルバムは聞いていたけれど、ライブ・アルバムは聞いた記憶はほとんどない。4人のライブは、もちおん見たことがない。決して熱烈なファンではない。そんな自分が、この映画を見て、あらためてレッド・ツェッぺリンってすごいバンドだったんだなと思えたし、4人のライブを聞きたいと思った。

 映画は、それぞれの幼少期の映像からはじまる。どんなバックボーンがあったのかが明かされていく。別のバンドやセッションで活動していて4人が出会う。4人による初のスタジオセッションでは「このバンドは人生を変える」と感じたという。ジミー・ペイジが在籍していたヤードバーズとして4人はツアーへ。それが1968年9月のことだ。そしてイギリスに帰国したのちにレコーディングが行われ、レッド・ツェッぺリンが誕生する。中心にいるのは、ジミー・ペイジだ。ジミー・ペイジは、ヤードバーズにしろレッド・ツェッぺリンにしろ、シングル・ヒットを狙っていなかったと明かす。

 ジミー・ペイジは録音された音源を持ってアメリカへ。デモテープを送るより、実際の音源を聞いてもらった方がいいという判断だったという。アトランティックと契約を果たした。レーベル契約と共に進められていたのがアメリカでのツアー。アルバムデビュー前の12月から行われたそのツアーの一本一本で、レッド・ツェッぺリンは確実に人気を集めていった。サンフランシスコでのライブの後には「自分たちに確信が持てた」という。60年代後半のアメリカ。サイケデリック・ムーブメントが花開いていた時代。レッド・ツェッぺリンのライブは、即興性もあり、サイケデリックでもあった。それがアメリカ、特に西海岸で認められた要因なのだろう。イギリスより先にアメリカで注目されたバンド。のちのジャムバンドの通じるという以上に、ジャムバンドの核心にあったような演奏だったに違いない。PHISHが、「Good Times, Bad Times」をカバーするのも腑に落ちた。

 1980年に不慮の死を遂げたジョン・ボーナムのインタビューも、このドキュメンタリーの大きなポイントになっている。他のメンバーのインタビューは2018年に行われたというが、時間を超えても生き続けている4人の強固な結びつきも感じられる。ジョン・ボーナムの生前の声を聞いている3人の笑顔も素敵だ。

 映画は70年1月にロンドンのロイヤル・アルバートホールでのライブで終わる。4人で音を出してからわずか2年弱。そこまでに至る時間は奇跡の物語だ。60年代後半という特別な時代を知る意味でも、見ておかなければならないドキュメンタリー映画だと思う。(KIKUCHI)

レッド・ツェッペリン:ビカミング

©2025 PARADISE PICTURES LTD.

9月26日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかIMAX®同時公開


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