埼玉県の西部にある「おおたかの森」と呼ばれている呼ばれている平地林。300年以上も前に、武蔵野を守る防風林として人の手に作られた森。数年前には所沢ダイオキシン問題としても話題になった場所でもある。この森の存在を多くの人に知ってもらいたいと、2012年にスタートしたフリーフェスが「OWL FES(アヲルフェス)」。当初から、フェスシーズンが終わりを迎える11月上旬に開催されている。オーガナイザーの目黒裕葵さんに直前インタビュー。
–––– OWL FESは、どんな思いを持ってスタートさせたのですか。
わたしも含む「人間」により、産業廃棄物やダイオキシンで脅かされたという過去のある場所。それでもなお、目前に広がる秋の日の森の、音も無く舞い落ちる幾千もの葉が金に煌めく様子は美しく、胸が詰まるものがありました。それは例え危害を受けようとも、それを与えた相手ですら包み込んでくれようという深い優しさを湛えた景色でした。
考えてみれば、幼少期より、たくさんの生物に携わり、助けられ、自然によって育まれた我が身であるにも関わらず、それに対する「感謝」を形にして来なかったのではないか?と初めて自身に問いかけました。
今の自分に何が出来るのか? 自身が食べて行く為の仕事がある以上、毎週行われている保全活動に続けて参加することは難しい。では生活の片手間でも出来ることとは? 保全活動現場に少ないと嘆かれている若い世代にも繋げて行くにはどうしたらいいのだろう? 現状からの再生だけではなく、根本的な意識からの改革を図るには? この美しい森の存在を多くの人と共有出来たなら、未来は変わってくるのではないだろうか?
こういった思いを煮詰めたものがアヲルフェスというかたちになったのです。
–––– 入場料を無料にこだわる理由を教えてください。
入場料は勿論、不必要なお金の動きを控える為、出店者さまから頂く参加費用なども極力抑えております。
アヲルフェスはミュージック系イベントでも、商業的イベントでもないからです。わたしたちの目的はあくまでも「この森の存在を多くの人に知ってもらうこと」。出店してくださる皆様も、来場してくださる皆様も「わたしたちの理念」に深く共感してくださる「共力者」であって「お客さま」ではないと思っています。
それでも入場の際、任意ですが募金のお願いをしております。現段階では予算0での始動は厳しいものがあるのです。しかしいつかはすべてが「有志」になること、そして来場者の皆様にとっても「共に造り上げるイベント」と意識していただくための「希望」が込められているのが「エントランスフリー」です。アヲルフェスは当日だけではなく、「会場作り」から「皆で作り上げるフェス」が始まっています。そして「ずっと続いていくイベント」ではなく、いつかは「終わること」を目指しています。
森で過ごす一日がわたしたちにとって、こんなにも豊かでかけがえのないものであること。そして私たちの未来に沢山の可能性を与えてくれること。入場無料で募金をお願いしていることにより、少しでも多くの方にそれを理解していただき、イベントの必要性もなくなるくらいの日が来ることが、わたしたちアヲルフェスにとって何よりの願いです。
–––– 会場のおおたかの森は、どんな場所ですか。
武蔵野を守る防風林として作られた、所沢市、川越市、狭山市、入間市、ふじみ野市、三芳町の5市1町をまたぐ埼玉県西武に残された平地林で、東京近郊では年々減少傾向にある広大で貴重な森です。実は、かの悪名高き「所沢ダイオキシン問題」で、かつて多くのメディアで取り上げられ、その中枢地区として話題に登った場所でもあります。
当時は産廃銀座などとも呼ばれる程、産廃施設が乱立していました。その焼却炉からはおびただしい量の黒煙が排出され、周辺住民への深刻な健康被害や農作物への影響が社会問題ともなりました。しかし地元の人々の懸命な活動により、炉は廃止され、その煙突からも煙が上がることはなくなりました。それでも置き去りにされた廃棄物による自然発火や環境汚染など、現在も森が抱える問題は決して解決したわけではありません。
オ オタカやフクロウ、タヌキやキツネ、野ウサギやたくさんの生き物たちが、もう一度安心して住める豊かな森を取り戻そうという願いを込め、この森を「おおたかの森」と名付け、保全活動をする「おおたかの森トラスト」という団体がいます。その活動により、危機にあった森が少しずつですが購入され、懸命な作業のもと、在りし日の武蔵野の面影が取り戻されつつあります。保全区域全体を使わせていただいているわけではなく、その活動の拠点となる「おおたかの森再生地」という一角。決して広くは無いのですが、想いはいっぱい詰まった場所…そこがアヲルフェスの舞台です。
–––– ここに参加することで、どんなことを持ち帰ってもらいたいですか。
靴底についた土、髪に残るひなた臭さ、全身に染み付いた草の香りです。
目一杯遊んだ、楽しい一日を抱いて、泥のようになって床に着く。夜が更けても瞼に巡る、その喧騒に、わたしたちはきっと、いつまでも胸を熱くする。そんな時間こそが、わたしたちにとって本当に大切なもの。
かけがえのないものに対し、自分はこれからどうありたいのか、何ができるのか…?
それが、この答を模索する道しるべになれるのではないかと思うのです。
OWL FES 2017
開催日:11月5日(日)
会場:おおたかの森再生地(埼玉県所沢市北岩岡46-1)
出演:MABROCK、OISO ROCKERS feat.岸真衣子、Indus & Rocks、他
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