2021年のフジロックが、間も無く開幕する。

 2021年のフジロックの開催が近づいてきた。今年は海外からのアーティストを招聘せず、ステージ数も減らし、日本国内のアーティストだけが出演するとアナウンスされたのは春。例年であれば、出演するアーティストの追加発表など、開催が近づいていくにつれて、フジロックに参加するモチベーションが上がっていったのだけど、今年に限っては、同じような気持ちにはなれない。良いことも悪いことも、時間が過ぎてしまうとすぐに忘れてしまう自分だからこそ、今の気持ちを残しておこうと思う。

 開催が近づいてきてから、新型コロナウイルスの感染確認者が全国で急増している。感染力が高いデルタ株がその要因だと言われている。三密を避けるということ以上に求められる感染対策。フジロックでは、ミュージシャンやスタッフに対しては、2週間前からの検温と、苗場入りする1週間程度前までのPCR検査、そして苗場入りする前日の抗原検査が求められている。ミュージシャンやスタッフが新型コロナウイルスを絶対に苗場には持ち込まない。

 お客さんに対しても、希望者には抗原検査キットを送付している。当日も、常時マスクの着用や、飲酒の禁止など、ガイドラインが作られている。アルコール禁止が告知される前までは、友人と「アルコールのないフジロックなんて、本当のフジロックじゃないし、おもしろくないよ」なんて話もしていた。

 なぜ自分は、今年のフジロックに行こうとしているのか。

 自然と人が共存する野外フェスは、未来を描いていると思っている。音楽(ライブ)からもいろんなことを教えてもらってきた。フェス、あるいはライブという文化への関心が、新型コロナウイルスによって日本では急激に落ちてきていると実感している。その文化を消したくはない、つなげていきたいという思いが核心にある。

 ミュージシャンでもアーティストでもないのだけど、フェスやライブに行くと身体の奥底から喜びが湧き上がってくることがある。大げさに言えば生きている実感。コロナによって、この実感がなかなか得られなくなっている。何が自分にとって大切なのか。それを改めて考える時間が、このコロナ禍だったように思う。

 もちろん、もっとも大切なのは家族(ちなみに家族はフジロック参加に反対)。フェスやライブも、コロナが収束したらまた浮上してくるのは間違いない。けれど違ったものとして生まれるのではなく、今までの文化、カウンターカルチャー時代からの「生きる悦び」としてのフェスや音楽のあり方をつないでいった結果として再生してもらいたい。フジロックは、時代や地域を超え、様々な文化をつないでいる。だからこそ、今年も開催してもらいたかったし、開催されるのならそこにいて、メディアとして何かを伝えたいと思う。

 ミュージシャンも、強い思いを持ってステージに立つに違いない。「伝説」っていう言葉をあまり使いたくはないけれど、それぞれのミュージシャンが、それぞれのステージで伝説を作る。そしてそれが結晶されたフジロックは、新たな歴史を構築する。

 コロナ感染拡大の要因としてターゲットにされたフェスやライブ。決して、そんなことはないっていうことを言いたい。フジロックからはクラスターを出さない。フェスからコロナを広げない。自分たちが生きている日本という場所で開催されるフジロックというフェスを継続させていく。ライブを楽しみながら、そのミッションを完結させる。それが今年のフジロックに参加するすべての人の責務だ。

 今年のフジロックは、当日券の発売は行われない。苗場に行けないという人のために、今年もYouTubeでライブが生配信される。


文 = 菊地崇

写真 = 宇宙大使☆スター

フジロック公式 YouTube チャンネル

 

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