違和感のなかにあるバンドとしてのポジティブな未来形。【Monthly Mu & New Caledonia】

昨年3月に開催されたりんご音楽祭の「RINGOOO A GO-GO」。2019年秋のフェスにオーディションから勝ち上がって出演したバンドのなかからグランプリを決定するイベントだ。ここで出会ったのが結成して1年ほどのこのバンドだった。


文・写真 = 菊地 崇 text & photo = Takashi Kikuchi

— バンドを結成のきっかけを教えてください。

夢大 バンドをやりたいなって思って、インターネットに募集記事をあげたのがきっかけでした。ドラム以外は、そこで知り合ったんです。聞いている音楽や好きなものがみんな近くて、共通する部分が多かったんですね。

— バンド名が、ちょっと不思議というか印象的というか。

達人 このバンドを組む前に友だちと朝まで飲んでいて、バンドを組むならどんな名前がいいっていう話になったんです。頭に浮かんだのが「月刊ムーとニューカレドニア」という名前でした。『月刊ムー』って、宇宙とかオカルトを扱う不思議な雑誌で。かたやニューカレドニアは天国に一番近い島と言われている。横並びにならない単語を合わせた違和感、それがバンドの目指す方向性を暗示しているのかなって。いろんなものを吸収して、いろんな音楽として放出していく雑食感というか。

夢大 はじめてのライブまでに、他にいいバンド名がみんな思いつかなかったんですね。それで「月刊」を日本語ではなく英語にして。

— 確かに配信されている曲を聞いても、いろんな音楽が聞こえてきます。

達人 良く言えばなんでもできるのかと。悪く言えばとっちらかってしまっている。それがこのバンドのアイデンティティだと思っています。

夢大 僕らの世代って、CDというパッケージのこだわりよりも、やっぱりデジタル配信が身近な存在としてあるんですね。プレイリスト文化なんです。11月にをリリースしたEPは、収録される4曲がまったく違った印象を持つ曲で、1曲1曲を強いものにしたいって思ったんです。いろんな音楽をやっているのは強みであり、今の時代に合っているっていうか。全部が違うテイストなら、違うプレイリストに入ることもあり得るわけじゃないですか。

達人 この曲はヒップホップ・テイストにしてみようとか、振り切ってイナたいロックにしようみたいな意見がメンバー内でいろいろ出てくる。みんなで意見を出して、曲の原型からどういう方向に進めていくのかは決めていますね。

— 「RINGOOO A GO-GO」で勝ち残り、りんご音楽祭に出演を果たしました。さらに多くのライブやフェスへ向かおうと思っていたであろう矢先に、コロナ禍になってしまった。

夢大 ライブはなくなってしまったけど、逆に制作へ集中できたと思います。

— 歌詞に託すメッセージには変化があった?

夢大 EPのなかにはコロナ禍になる前に歌詞を書いた曲もあるんですけど、コロナとかブラック・ライブズ・マターとか香港の暴動とか、うごめいていた問題がエネルギーとなって噴出してきたじゃないですか。いろんなことが浮き彫りになってきているなって思っていて…。そういうことを乗り越えた先にある未来に向けて、ポジティブなことを歌いたいと思いました。EPに収録されてるサウンドの印象はそれぞれ違うけど、歌っているテーマは一貫しています。

— 音楽は人心に伝わっていくものだし、そこから広がっていくことって少なくない。

夢大 歌ったことが現実になるってこともあるじゃないですか。それが理想だなって思いますね。

— 今、持っている目標は?

夢大 目の前にあることを一個ずつクリアしていくことで、遠くにある大きな目標に近づいていけるのかなって。音楽では親の世代も自分たちの世代も、年齢を越えて全世代にいいなって思わせられるバンドになることが夢。自分たちのオリジナリティのなかに、ポップスでありつつとんがっている部分も要素として持っている。そのバランス。あと海外のフェスにもいつかは出てみたいですね。

Monthly Mu & New Caledonia

2019年に結成。バンドとなったきっかけはインターネットで知り合い、顔合わせのジャムで意気投合したこと。メンバーは門口夢大(Vo)、鈴木龍行(Gt)、若林達人(Gt)、小笹龍華(Ba)、武亮介(Dr)の5人。バンド名で表現しているのは違和感。多様な音楽を取り入れ、自分たちの音楽として表現していきたいという思いがそこにある。昨年は「出れんの!?サマソニ!?」ではファイナリストとなり、りんご音楽祭では「RINGOOO A GO-GO」を勝ち抜き出演を果たした。2020年11月には1st EP『Prologos』を発表。2021年5月に配信シングル「ISSUE」をリリースした。

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