三軒茶屋から瀬戸内海の大三島へ。エコロジー&オーガニックの和が広がる。【ふろむあーすカフェオハナ(藤田康祐樹)インタビュー】

IN1999年に三軒茶屋のエコー仲見世商店街にオープンした「ふろむあーす」。昭和の雰囲気が残るその場所から、フェアトレードや自然食品などのアイテムを通して、遠い国の文化や近くに潜んでいる問題を教えてくれたショップだった。2007年には246沿いに「カフェオハナ」をオープン。ここでは映画の上映会やライブなども行い、東京のエコロジー&オーガニックコミュニティを構築してきた。この「ふろむあーすカフェオハナ」が2018年1月いっぱいで三軒茶屋での営業を終える。オーナーである藤田康祐樹さんに19年を振り返ってもらい、これからの展望をお聞きした。

三軒茶屋からオーガニックを発信して19年。

–––– どういうきっかけで99年にふろむあーすをオープンさせたのですか。

藤田 僕はそれまでずっとコンサートプロモーターをやっていて、ワールドミュージックの呼び屋さんだったんです。アフリカとか、いろんな国の世界の人たちを招聘していました。そこでライブをやるだけではなくて、その音楽を生んだ地域のカルチャーなどを紹介していて。ハイライフという呼び屋さんです。招聘するミュージシャンたちの国が持つ文化やバックボーンを調べていくうちに、いろんな問題も知るようになって。音楽を楽しむだけじゃなくて、いろんな問題があるんだっていうことを知ってもらいたくて、お客さんに冊子を配ったりだとかしていたんです。特にアパルトヘイトには深く関わるようになっていって、当時は海外のミュージシャンの多くがアクションをしていたし、日本でもアパルトヘイトを反対する団体もできていましたし。世界中にいろんな問題がありすぎる。それぞれを紹介するのに何かいい方法はないかなって考えていたんですね。そんな時にフェアトレードっていうものを知って。商品を通してストーリーを伝えたりだとか、いろんな国のモノで素敵にコミュニケーションする。さらに商品を売ることで還元されるフェアトレードってすごくいいなと思って。それでカミさんがフェアトレードの会社で働きはじめて、将来的にショップみたいなものができたらいいねって話していたんです。そしてハイライフを辞めたタイミングで店をやろうと思ったんです。

–––– ハイライフにはどのくらい勤めていたのですか。

藤田 87年から99年までですから12年です。

–––– 当時は青山のCAYとかで多くのライブをしていましたよね。

藤田 80年代後半から90年代前半にかけてはそうですね。パパ・ウェンバなどはCAYでやって。CAYのイベントのフライヤーを真砂(秀朗)さんや内海(朗)さんがデザインしていて、そのフライヤーが気に入って、ハイライフのライブのフライヤーなどもデザインしてもらいたいってお願いしたら、ちょうど「いのちのまつり」の準備の真っ最中だったんですよね。だからカウンター的な文化も、彼らを通して教えてもらったりしていました。それまでの僕は音楽ばかりで、原発の問題とかは深く関わっていなかったんだけど。

–––– 今年で19年。振り返ってみると、オーガニックやエコロジーという点ではどんな変化がありましたか。

藤田 いろんなことがあったけど、あっという間でしたね。お店を続けていくなかで、フェアトレードからさらに日本国内の問題も目の前に立ち上がってきて。鎌仲ひとみ監督が『 六ヶ所村ラプソディー』を作り、原発問題などにも関わるようになっていき、上映会などもやるようになっていました。モノを売るお店だけではなく、情報を交換したり伝える場が欲しいと思うようになっていたときに、前にここ(カフェオハナ)の場所あった喫茶店が辞めるということを聞いて。喫茶店の娘さんがうちのお客さんで、次にどうですかって声をかけてくれたんですね。喫茶店のようなスタイルのお店をやろうとは考えていなかったんですけど、じゃあやってみようかっていうんで、カフェオハナをスタートさせたんです

–––– カフェオハナのオープンはいつでしたのでしょうか。

藤田 2007年なんです。だから10年ちょいやっているんですよね。しばらく仲見世にあったふろむあーすとカフェオハナを両方やっていました。3.11の震災後、省エネしながら両方の店の営業を続けていたんですけど、さらに省エネに向かうんだったらふたつのお店をひとつにまとめた方がよりエコじゃないかと考えて、ふろむあーすを閉めて、そこにあった商品をすべて持ってきて、カフェと雑貨というスタイルのお店にしたんです。それが2011年の後半です。

–––– いろんなことを教えてくれる場でした。

藤田 興味あることをいろいろ伝えていましたから。もともとがイベント屋さんなので、自分が関心を持つものならば、ここに誰かに来てやってもらうとか。

–––– 長くやってきて、お客さんのスタンスは変わってきましたか?

藤田 ちょっとずつなのでこっちはなかなか気づかないですけど、明らかに変わっていると思いますね。フェアトレードのことでも、99年当時はほとんどの方が知らなかったでしょうし、今は若い世代でもフェアトレードの商品は買わないとしても、その言葉は知っていたりする。大三島に行くと、それを1から伝えなければならなかったしているので、それがまた自分にとっては新鮮で。新しい場所でもフェアトレードのことを若い世代に伝えたりしたいと思っています。そういう意味では、フェアトレードのことでも、意識的なことでも、変わってはいるけれど、まだまだ日本の今の状況を俯瞰してみたら、一人一人の心の深くまでは伝わっていないなと思いますね。明らかに少数派ですし。ちょっとずつボトムアップしているような気はしていますが。

瀬戸内海の大三島への移住。

–––– 大三島はどんなきっかけで見つけたのですか。

藤田 もともと生まれが、大三島の近くの因島なんです。しまなみ海道を尾道から今治まで行く間の島。生まれ育ったこともあり、この界隈が好きなんですね。将来的には戻りたいという気持ちを持っていたんです。それで、この界隈をリサーチした時に、大三島が気に入って。大三島で面白い物件がないかなって空き家バンクみたいなところに出ている物件を紹介してもらったりするようになって。そんな中で、今、ゲストハウスをやっている物件がぽこっと出て。

–––– 飲食店だったんでしたっけ?

藤田 一階が焼肉屋さんとスナックが入っていた建物です。何年も使っていなかったこともあって、すごく安く出ていたんです。この物件を見て、ゲストハウスならできそうだなって思って。島では飲食はなかなか難しいと思うんだけど、ゲストハウスならしまなみ街道に人は来るし、島にはゲストハウスがないので、可能性はあるかなって思って。

–––– 大三島がいいと思った理由は?

藤田 自然や空気感が一番の理由です。故郷の因島には日立造船がずっとあって、造船所の島なんですよね。ひとつの大きな会社が島にあると、島の雰囲気っていうのはその会社が持つものに支配されてしまうんですよね。その会社に依存して、その会社がダメになってしまうと一気に沈んで過疎化してしまう。因島は日本の田舎の典型のようなものになってしまっているんですけど、大三島はそういうのが逆になくて、昔からずっと農業中心の島なんです。島にはみかん畑がいっぱいだし、しまなみ街道の島のなかでは最も自然が豊かだし。

–––– 大三島は農業が中心なのですね。

藤田 そうです。漁業がほんのちょっと。あとは観光ですね。愛媛で一番大きな神社があるんです。大山祇神社と言って、古くから多くの人が来ていた島で、そういう部分でも面白い島なんですね。神の島と知られていて、神島になって、御島(みしま)という名前でしばらく呼ばれていて、近年になって大三島となったようなんです。農業ではオーガニックで育てている生産者の方もいらっしゃるので、きちんと商品化して紹介していきたいと思っています。島では自分たちが食べていけるだけのものを作っていれば十分という考えの方も多いですから、オーガニックも多いんです。

–––– 大三島に行くことはいつ決めたのですか。

藤田 2016年春にカフェをオープンさせました。夏にゲストハウスができて営業許可を取得したんです。2016年に入ってからは、向こうに行っていろいろ作っていて、たまに東京に戻ってくるという生活でした。住民票も移して。移すことによっていただける助成金もあったんですよ。

–––– その助成金の内容とは?

藤田 飲食店を2016年3月までにオープンさせれば100万円をサポートしますよ、というものです。その条件のひとつに住民票を移すことがありました。

–––– 今後は大三島でどんなことをやろうと考えていますか。

藤田 島っていうのはわかりやすく閉じた空間じゃないですか。大三島は橋ではつながっているけれど、その島のなかで食の自給自足はもちろん、エネルギーまでを含めた完全循環型の暮らしができるよっていうことを実証したいなって思っています。

–––– そのひとつのモデルケースになればいいですよね。

藤田 大三島でやれるんだったら、自分たちの暮らしている場所でもできるかもしれないって考えてもらえて広がっていけば。小さな島でできるのなら、他の広い土地ならもっと可能性が広がるだろうって思ってもらえるだろうし。

–––– 藤田さんは代々木公園でのアースデイなどにも関わってきました。大三島でイベントなどは行わないのですか。

藤田 知り合いのミュージシャンとか全国を巡るじゃないですか。その足で寄ってくれたりして、ついでに投げ銭ライブやろうかみたいなノリで、ちょくちょくやっていますよ。カフェオハナにあるスクリーンなどは島に持っていくので上映会なども開催しようと思っています。

–––– 長く続いていたお店を終えて次に向かう。今の心境はどういうものですか。

藤田 クローズの日が近づいてくるにつれて、いろんなお客さんが訪ねてきてくれて、だんだん実感がわいてきていますね。イベントも多く、毎日が忙しくて、それに追われてしまっているということが現実なんですけど(笑)。

ふろむあーすカフェオハナ(東京・三軒茶屋)

2018年1月31日の営業を持って終了。1月28日まで、夜はイベントが連日開催されます。30日と31日は通常営業。

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