TAKASHI KIKUCHI

Switch、Balance、88、Ljなど、数々のカルチャーマガジン&フリーペーパーの編集を歴任。国内外のフェスにも数多く参加し、フェスおじさんという愛称のもと、カウンターカルチャーやフェスカルチャーを広めている。

記事一覧(54)

【ブラリフェス/フォレストジャムグランデ】小さなフェスを支えるバンドたちの森のなかでの競演。

FORST JAM GRANDE11.11@中滝アートビレッジ 個人的に2017年の野外フェスのフィナーレを飾ったのが「フォレストジャムグランデ」。23本目のフェス参戦だった。 去年、4年ぶりに復活したけれど参加できなかった。だから今年こそは、どうしてもこの森に行きたかった。2日間でラインナップされたのは22。ライブを中心に活動しているバンドやアーティストばかりだ。自分たちで、自分のライブの場所を開拓しているアーティストたち。この10年ほど、各地の小さなフェスを支えてきたアーティストたちでもある。だからこそ、ライブのクオリティが高い。ステージが3つ用意されているのだけど、メインではないサブのふたつは同時間にライブが行われている。どれを見るのか、どれを見たいのか、迷い続けていた。 11月中旬なのにそれほど寒くはない。森は日本ではない場所にいるようなトリップを感じさせてくれたりもする。音を探しながら、森を彷徨っているような感覚。ステージとステージは離れてはいないから、すぐに目的の音楽の在り処には行けるんだけど、移動している時間も楽しい。 キャンプせずに1日だけの参加ということもあったのだろうけど、とにかく音から音へ、休むことなく流れていたように思う。それがDJではなく、バンドであるということが「フォレストジャム」の特徴なのだろうし、草の根的なフェスを支えるバンドたちの音世界が豊かなことを感じさせてくれる。

【ブラリフェス/FESTIVAL de FRUE】知らない世界を味あわせてくれるライブという深い時間。

FESTIVAL de FRUE 2017 11.03~04@つま恋リゾート彩の郷 今年の秋フェスで、もっとも期待し、もっとも胸を躍らせていたのが「FRUE」。なんてったって、あのジャジューカが初来日する。モロッコのリフ山脈南側に位置するスリフ族の村で数千年とも言われるほど長く継承されてきた音楽は、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズやオーネット・コールマンを魅了してきた。ヨーロッパでさえほとんどライブをしていないはずなのに、本当に日本までやってきてくれる。ジャジューカだけではなく、ファビアーノ・ド・ナシメントやババズーラなど、ここでしか見ることのできないアーティストがラインナップされている。直前のインタビューでオーガナイザーの山口彰悟さんは、「このフェスを開催する遠因として、TPC(トゥルー・ピープルズ・セレブレーション)がなくなったこととフジのオレンジコートがなくなったことは少なからず影響があるかもしれない」と語っていたけれど、確かにTPCやオレンジコートでしか呼んでくれないようなバンドのライブばかりだった。 フェスでは、実はライブに集中できないこともある。けれど「FRUE」はライブに集中させてくれた。フェスの基本はライブのクオリティにあることを再確認させてくれた。数多くのフェスが開催され、出演するバンドもそれほど変化がなく、様々なコンテンツを用意する傾向にあるフェス。そうじゃなくて、ライブとはどういう体験なのか、ライブとはどういう時間なのかを教えてくれたような気がする。 スタッフの多くはTPCに関わってきた仲間たちだった。いろんな音を体験してきた大人の不良たち。人気があるとか、このアーティストが出れば人が呼べるということではなく、音楽の本質とは何なのかを「FRUE」で体感できた。 ジャジューカは、土曜深夜のNO PA SETを含めて3セット。すべて違う音世界を浴びせてもらえた。特に音の波が止まらなかったNO PA SETは、今までに体験したどのトランスとも違っていた。静かな音であるはずなのに、脳の中でその音が拡散していくかのようだった。 お客さんが少なかったのが残念。新しい音にフェスで出会って欲しいと思う。それを提供してくれたのが「FRUE」だった。次には見ることができないかもしれない本物のマスターたちの演奏は本当に刺激的だった。  

【ブラリフェス/朝霧JAM】キャンプインフェスの楽しさを確認する場所。

朝霧JAM10.07〜08@ 富士山麓朝霧アリーナ・ふもとっぱら 朝霧JAMには、ここ数年はキャンプよろず相談所のメンバーとして参加している。開催前日の金曜に入って月曜まで。キャンプよろず相談といっても、朝霧JAMに参加する人たちはキャンプインフェスに慣れているような人が多く、相談はそれほど多くない。今年、自分が受けたテント関係での相談は2件のみ。一番多いのが、キャリーカートのタイヤ付近の破損。キャンプ道具だけではなく、食材や飲み物など、「これ、朝霧JAM期間中に消費できるの?」って思ってしまうほどの、相当な量の荷物の重さによって、タイヤ付近が悲鳴をあげてしまう。火を使っていいBサイトに行く人は荷物が多くなりキャリーカートを使っているけれど、このBサイトの道が砂利が多く起伏も激しい。朝霧JAMでキャリーカートを使う場合は、タイヤが太く、頑丈に作られているものの方が絶対にいい。値段で判断するわけではないのだけど、安価のものは壊れる可能性が高い。 相談所勤務(と言っていいのかどうかわからないが)が長く、見ることができたライブは、初日がD.A.Nとカール・クレイグ、二日目がSuchmosくらい。2日間のフェスで見た数としては、確かに少ないだろう。けれど朝霧JAMはライブを見ることよりも、そこにいることが楽しい。金曜の夜に強く降った雨によって、かなり足場は悪かった。富士山が見えたのは土曜の早朝の一瞬だけ。それでも楽しい時間だ。そこにいていろんな人と会うことが、朝霧JAMへ行く一番の理由だ。 朝霧JAMでは、ロープや紐を使っての場所取りが禁止されている。けれど多くの人が、後から来る友人たちの場所も押さえておきたいという気持ちなのだろう、紐を使って自分たちの場所を確保していた。数年前に比べればそれほど込んでいないけど、それでも来場するすべての人が満足するほどゆったりしたスペースがキャンプサイトにあるわけではない。みんながシェアして、気持ちいい時間が過ごせるようになることを願っている。

集まった署名は3万5978筆。横浜・瀬上沢の自然を守る活動は続けられる。

 昨日(12月19日)、「横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会」が12月10日まで行われていた、横浜市栄区上郷町周辺の都市計画の是非を問う住民投票の実施を目指して集められた署名についての記者会見を行った。 開発計画の賛否を問う直接請求のための署名数は3万5978筆(総署名数3万6441、不備署名463)だったと発表された。目標としていた横浜市の有権者数の50分の1である約6万2000筆に達しなかったため、直接請求は行われない。 9月15日から、衆議院選挙による中断期間も含め、およそ2カ月に及んだ署名を集めるという活動において、瀬上沢の開発のことが多くに人に伝わった。記者会見では、集められた署名用紙がテーブルに置かれていた。残念ながら直接請求できる数には到達できなかったけれど、この数は決して少なくない。「この活動によって、多くのい人々と出会うことができました。横浜の緑を考えることは都市の未来を描くことです。当初は自分たちの暮らすローカルな視点でしたが、徐々に日本全体に及ぶ問題であると考えるようになっていました。来年3月までに下される横浜市長の都市計画の最終決定まで、情報開示の請求などさまざまな活動を続けていきます」と実行委員会の理事。 会見では口にしていなかったけれど、もし3月に市長が瀬上沢の都市計画に対してゴーサインを出したとしても、瀬上沢の自然を守ることを続けていくという。 「市長にこの集まった署名を届けたいと思っています」 一度失われてしまった自然は簡単に戻ることはない。それを今回の署名を集める活動によって、改めて教えてもらうことができた。

光に導かれる再生。GOMA個展、新宿高島屋で開催中。

 12月26日まで、新宿高島屋の美術画廊で、「GOMA個展〜再生〜」が開催されている。 2009年11月に、不慮の事故にあい、GOMAさんは多くの記憶を失ってしまった。しばらくしして高次脳性機能障害であると診断され、その障害とは今も付き合っている。 自分がどういう存在なのか。もしかしたら、その重要な悩みさえ、瞬間には感じていたはずなのに、記憶に蓄積されていかなかった時があったのかもしれない。苦悶した日々が続いていたなかで、自ら最初に手にしたのが相棒のディジュリドゥではなく絵の筆だった。音楽やダンスを表現の手段としていたGOMAさんは、それまで絵を描いたことがほとんどなかったという。そして描かれたのがドットの絵、脳に浮かんだ光の絵だった。絵に向かっている時が、無になれる時間だったという。その意味で、絵がGOMAさんを救ったのかもしれない。 再びディジュリドゥを手にして、音楽を取り戻していくなかでも、GOMAさんは絵に向かいDUけている。それな今も、これからも変わらない。 そんなGOMAさんの個展。一点一点に、それぞれ違う光を見ることができる。その光はどれも優しい。後光のようにさえ感じる。どうGOMAさんの脳に、この光が浮かび上がってきているのだろう。 今回の個展は、この3年くらいの間の作品で、ひとりで滞在したバリで描かれた作品もあれば、手塚治虫さんの火の鳥を描いた作品もある。光のなかの不死鳥は、GOMAさんの未来を示唆しているのかもしれない。 GOMA&The Jungle Rhythm sectionの9年ぶりになる新作アルバムも、来年2月にはリリースされると発表された。事故から8年。GOMAさんは、まさに再生の中にいる。